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調査研究論文の要旨

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観光地域づくりにおける中小宿泊業の役割発揮のためにー伊東温泉を事例としてー

  • 本稿では、宿泊業のなかでも特に地域に根差した中小宿泊業を対象として、現状や課題を整理しつつ、地方創生の起爆剤として期待される観光地域づくりにおいて中心的な役割を担っていけるのか、あるいは担っていくにはどうしたらよいのかを明らかにすることを目的とする。
  • 宿泊業は、旅館・ホテルといった宿泊料を受けて人を施設に宿泊させる事業で、観光資源に関する知識を含め、地域の観光ビジネスにおいて中心的な役割を担っており、特に地域におけるすそ野が広く観光関連産業に与える影響が大きいとされている。
  • 宿泊施設の機能をみると、宿泊の提供、飲食の提供、交流機能が主要な機能となる。先行研究では、近世から近代にかけて分業化・専門化が進んだことで宿屋の多機能性の喪失につながり、料飲機能のみが発展し交流を軸とする宿泊業へと発展したが、現代では料飲機能も切り離されつつある。個人化やリピーターが市場の多くを占める現代では、一対一でのもてなしが交流には重要で、一旅館ではなく地域全体でいかにして旅人と住民の交流の場を高めていくかという地域経営の哲学といえるとしている。
  • 別の研究では、宿泊施設は従来の快適な施設・サービスの提供という役割のみならず、地域を活性化する拠点の役割を果たせるのではないか、ホテル・旅館のなかにフューチャーセンターを設置し、都市部と地方の人々をつなぐことで、新たな付加価値を生み出す産業やその土地特有の課題を共同で解決するきっかけを提供できるのではないか、また観光客と周辺住民とを結びつける「地域の共創の場」であるともしている。
  • しかし、このような交流機能発揮はいずれも相応の規模や人材を有する宿泊施設への指摘と考えられ、中小規模で人材等経営資源に余裕のない宿泊施設では中心的な役割の一翼を担うのは難しいのではないか、地域活性化のためには個社では限界があり連携組織活用と実践の必要性があるのではないかという仮説を設定し、仮説検証のため、中小規模の旅館・ホテルや旅館ホテル組合、観光協会に対してインタビューを行った。
  • インタビュー結果からは、交流機能や情報発信機能により地域全体の付加価値向上に資するような取り組みは理想ではあるが、やはり経営資源に余裕のない中小規模の宿泊施設では、個社ごとの対応は難しいこと、また、地域全体を考える余裕がないのが実情であり、連携組織である事業協同組合等の活用が観光地域づくりには必要であるとの結論が得られた。一方で、連携組織活用上の障害も明らかとなった。
  • 本研究から得られた示唆は、観光地域づくりにおいて中小の個別企業では限界があり、連携組織の活用が必要ではあるが、活用上の障害となる公平性やメンバーの意識を変えるためフューチャーセンターのように熱意と多様性のある人々が集まりアイデアを創発し実行していくことで、課題解決につながるのではないかというものである。連携組織の運営方法見直しとよそ者等を含む観光地域を支える人々が協力や協働を惜しまなければ活用上の障害も取り除かれ、十分に機能発揮できるのではないだろうか。

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