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調査研究論文の要旨

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欧州における地域活性化のための中小企業政策

  • 「中小企業優先(Think Small First)」を経済政策の基本理念とするEUは「欧州中小企業議定書(SBA)」を策定した。SBAの目的は、政策的に起業を支援し地域内の潜在力をイノベーションにつなげ、経済発展を促すことである。具体的には、①金融へのアクセスの改善、②市場へのアクセスの改善、③競争力・持続可能性のための枠組みの改善、④起業家精神の醸成で、中小企業の公共調達への参入促進と起業家教育の国家戦略化が今後の課題となっている。
  • EUは、中小企業政策を地域で実施する際に、地域開発政策との一体化を指向しており、地方政府のキーパーソンを結節点とする産学官民連携を推奨している。OECDも両政策の一体化を指向するとともに、社会から排除された地域や人が存在しない経済(包摂的経済)の構築のために、社会的企業の支援も重視している。
  • 英国中小企業について国レベルでみると、個人自営業を中心として起業数が長期にわたって増加している。また、社会的企業のプレゼンスも高い。地域レベルでみると、イングランド、特にロンドンとその近郊で高スキルの個人自営業が急増しているが、地域間の経済格差が大きい。
  • 2010年代の英国の中小企業政策をみると、EUに先立って、①金融へのアクセスの改善(スタートアップ・ローン等の英国ビジネス銀行の施策他)、②市場へのアクセスの改善(公共調達への参入の簡素化やICTを利用したサービス輸出の支援)、③競争力・持続可能性のための枠組みの改善(成長バウチャーによるマネジメント・スキルの向上と行政改革)、④起業家精神の醸成(ICTの活用や産学官民連携による初等段階からの起業家教育、教育者等のスキル向上)等に加えて、⑤社会的企業への投資優遇税制が実施されてきた。地域開発政策と中小企業政策の統合政策として、行政管轄内に限定されない民間主導の協力体(Local Enterprise Partnerships)が各地域で構築されている。起業環境は過去最良であり「中小企業は黄金時代」を迎えていると2015年2月に評価された。
  • 「中小企業優先」を始めとして企業に関する政策の根拠となる基本的な法律は会社法である。2006年英国会社法において中小企業と創業に関する負担が軽減された。さらに、取締役に対する地域社会の利益への考慮を義務づけ(172条)、社会的企業のための法人格である「コミュニティ利益会社」の制度化等も行われ、中小企業政策と地域開発政策の一体的な運営の基礎をなしている。
  • 欧州、特に英国の中小企業政策から日本への含意を導出すると、①初等教育から高等教育までの切れ目のない起業家教育の制度化、②自治体の管轄で制約されない多様なステークホルダーの連携による地域開発政策と中小企業政策の一体化、③地域社会の活性化にとって支援的な会社関連法制の整備、が重要であることが示唆されている。

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