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調査研究論文の要旨

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中小企業のメインバンク・システム-リレーションシップ・バンキングとの接点を求めて-

  • 本稿はこれまでに発表した
  • 『中小企業金融検討のための「固定費配賦型収益管理モデル」の提起について―情報の非対称性・エージェンシーコストの議論を踏まえて―』(商工金融2007年7月)
  • 『情報の経済学と中小企業金融―実務的観点における問題点の整理―』(商工金融2008年10月)
  • 『中小企業金融における新旧融資手法の対比による問題点の整理』(日本中小企業学会論集2009年8月)
  • 『“顔”の見える中小企業金融』(商工金融2010年1月・2月)らの四部作に続く最終稿として位置づけられる。これら4つの論文は、本稿に至る言わば露払いの役目を担っているということだ。
     融資の実行においては、それがその本来的に有する使命に照らして、予め機能するか否かの見極めがしっかりとなされていなければならない。「使途が限定されず、ある時払いの催促なし、おまけに無利子」であればどんな人間も喜んでおカネを借りることであろう。だが企業金融はそんなことであってはいけない。そもそも企業金融においては、その資金提供が必ずや「付加価値」を生み出すものでなければならないのだ。 企業金融において、この命題は絶対的に“真”であると言ってよいであろう。
     要は企業金融においては融資を実行する前に、案件が「付加価値」を生み出すものであることの事前確認が必要ということである。こういった確認作業は融資審査の真髄であり王道でもある。多聞にこうした観点からの融資審査は、クレジット・スコアリングのようなハード情報に頼る手法とは一線を画するものと見てよい。頭の黒い鼠でも白い鼠でもおカネを貸して、それが「ただただ利息を生んで、元本が無事返済されればよい」とする立場とは明らかに異なる。クレジット・スコアリングなども行き過ぎれば“逆選択”の問題を招来してしまう。そうしたところに、中小企業におけるメインバンク・システムを新たな目で追及することの意義があると考えるのである。
     本稿では上記のような問題意識の下、まずわが国におけるメインバンク・システムに関する先行研究をサーベイする。そうしたなかでメインバンク・システムに関する定義、その機能などを確認する。そしてこれまでの先行研究が、大銀行=大企業関係に集中していることについても見て行く。次いでそれらの先行研究を踏まえて、中小企業におけるメインバンク関係は大企業のそれとはまた異なるものであることを論述する。その延長線で、中小企業のメインバンク・システムの実像を洗い出す作業を行う。ここで中小企業におけるメインバンク・システム像を洗い出すことが出来たとして、更なる問題は、銀行と企業が安定的かつ成算的なメインバンク関係を築くためには、どのような情報が収集され、それがどのように処理されるのかを確認しなければならないことである。近年コストセービングの観点から、中小企業金融においてはトランザクション・バンキングの推奨されることが多い。トランザクション・バンキングで収集される情報は、基本的にハード=定量情報でしかない。観点を変えれば、ハード情報だけで「付加価値創造」への見極めが可能か否かということである。
     そうした見極めが確認されれば、一方でリレーションシップ・バンキングの本質的必要性が浮かび上がることともなる。 非対称情報を埋め合わせる手段としてリレーションシップ・バンキングへの期待が大きいわけであるが、リレーションシップ・バンキングが相対的に高コスト手法であったとしても、コスト論議だけでは納まらない可能性がこの手法には擁されている。

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